Customer Touchpoint Transformation — Memo v2.2 / 2026.07.07

顧客接点の
エージェンティック変革

「ユースケースが先か、エージェントが先か」。ボード討議で浮かんだこの論点を、
思考の順序と資産の持ち方という2つの問いに分解し、v1のAgent整理と統合したフレームとしてまとめる。

What = ユースケース(ビジネスの思考) How = エージェント(開発の構造) 有人接続
Conclusion

フロー(思考・提案)はWhat起点
ストック(資産・開発)はHow単位で持つ。

どちらを「先」にするかは一つに決めなくてよい。ユースケースは価値の単位、エージェントは資産の単位。
両者はCapabilityカタログと横断会議体で接続する。有人対応は上位概念ではなく、AIファーストのフロー後段に置く。

Section 01

論点の分解 — 「先」には2つの意味がある

ユースケース起点(ビジネス側の思考)とエージェント起点(開発側の思考)は対立しているように見える。
実際には性質の異なる2つの問いが混ざっており、分けて答えると対立は解消する。

Q1 — 思考の順序

価値を考え、提案する順序は?

→ ユースケース起点(What → How)

顧客は「Phone Agentが欲しい」のではなく「CS対応を変革したい」。What(変革したい業務)をJourneyに分解し、各ステップを担う手段としてエージェントが決まる。

Q2 — 資産の持ち方

開発資産・責任をどの単位で持つ?

→ エージェント単位(How)

エージェント(チャネル×手段)は数が少なく長寿命。ユースケース単位で資産を持つとCapabilityが重複開発され、顧客体験も分断される。

ユースケースは良い価値単位だが悪い資産単位、エージェントは良い資産単位だが悪い提案単位。どちらか一方を全体の主語にすると破綻する。
Section 02

Agentの定義 — 5つのプロダクトラインとv2での再解釈

v1で定義した5つのAgent。名前は引き続き使えるが、v2の「チャネル×手段」モデルにより
AvatarとOperatorは位置づけが変わる。

LINE AgentLINE × chat維持
LINE上で顧客と対話するAIエージェント
v2でも位置づけは変わらない。
Phone Agent電話 × voice維持
電話上で顧客と対話するAIエージェント
v2でも位置づけは変わらない。
Site AgentWEB × chat / voice / avatar拡張
Webサイト上で顧客と対話するAIエージェント(chat, voice)
avatarも手段として内包し、Webサイト上の接客体験全体を担う。
Avatar Agentavatar = 手段再定義
アバターUI上で顧客と対話するAIエージェント(独立プロダクトライン)
「avatar」はコミュニケーション手段に再定義。WEB・アプリ等のAgentが手段として提供する。
Operator Agent有人接続再定義
有人対応を支援・半自動化するAIエージェント(chat, voice)
有人接続のCapability群(handoff・要約・回答案・承認送信)+フロー後段の有人対応として再定義。
追加候補メール / アプリ新規
v1には存在しない
ボード討議で顧客接点チャネルとして追加。メール × chat、アプリ × chat / voice / avatar を検討する。
補足(v1の設計意図とv2での解消)
  • Site Agentは「Webサイト上の接客Agent」という意味で採用。
  • v1では「Web Site」だとAvatar Agentと軸がぶつかるため命名を避けた。v2ではavatarを手段側に置くことでこの衝突自体が解消される。
  • Operator Agentは有人チャット / 有人ボイスの支援を含む。v2では特定チャネルに紐づかない全Agent共通の部品群として扱う。
Section 03

全体構造の考え方 — Agent × Use Case × Capability

AgentとUse Caseは1対1で結びつけない。Agentはプロダクトライン、Use Caseは各Agent上で提供するソリューション、
CapabilityはUse Caseを支える共通機能。3つの掛け算で全体を捉える。

Agent
プロダクトライン(チャネル × 手段)
LINE Agent Phone Agent Site Agent avatar手段 有人接続共通
×
Use Case
提供する価値・変革したい業務テーマ
Customer Support Sales 接客 予約受付 カウンセリング 申込支援 リマインド
×
Capability
Use Caseを支える共通機能
FAQ回答 CRM参照 顧客認証 予約変更 Handoff 会話要約 回答案生成 承認送信 フォーム入力
1つのUse Caseの中でも、複数のAgentが関与することがある。例:Customer Support には Site / Phone / LINE / 有人接続 が関与する。

手段(How)の分解 — 顧客接点チャネル × コミュニケーション手段

顧客接点チャネル chat voice avatar
LINE
WEB(site)
電話
メール
アプリ

※ 結線は例。対象顧客・案件に応じて組み合わせを選定する。

Section 04

整理フレーム — Use Case → Journey → Agent → Capability → Backlog

思考はWhatから流れ、成果物はHow側のバックログに蓄積される。
この5ステップがフロー(価値の流れ)とストック(資産の置き場)をつなぐ整理の型になる。

1
Use Case
顧客に提供したい価値(業務テーマ)
Customer Support、Sales、予約受付、カウンセリング など
2
Journey
Use Caseを構成する業務ステップ / 顧客ジャーニー
例:Customer Support問い合わせ受付 → FAQ一次回答 → 照会 → 変更受付 → エスカレーション → フォロー
3
Agent
各JourneyをどのAgentが担うか(接点 / 体験)
LINE / Phone / Site の各Agent、avatar手段、有人接続
4
Capability
そのJourneyを実現するために必要な機能
FAQ検索、顧客認証、契約照会、会話要約、回答案生成、承認送信 など
5
Agent Backlog
Capabilityを各Agentの開発項目に落とす
LINE Agent backlog、Phone Agent backlog、Site Agent backlog など
フロー:価値の流れ(ビジネス側の思考)
ストック:資産の置き場(開発側の構造)
Section 05

例 — Customer Support を分解する

整理フレームを Customer Support に適用した例。
Use Case を6つのJourneyに分解して各Journeyを担うAgentを割り当てる。1つのUse Caseに複数のAgentが関与する。

Journey分解 01問い合わせ受付 02FAQ一次回答 03注文 / 契約照会 04変更 / キャンセル受付 05エスカレーション(複雑案件) 06対応後フォロー
Journey Site Phone LINE avatar手段 有人接続 概要
1. 問い合わせ受付各接点で問い合わせを受け付ける
2. FAQ一次回答FAQ検索・一次回答
3. 注文 / 契約照会注文・契約情報の確認・案内
4. 変更 / キャンセル受付変更・キャンセルの受付
5. エスカレーション有人対応へのエスカレーション
6. 対応後フォロー対応後のフォロー・アンケートなど

※ avatar手段は、対面に近い体験が必要なシナリオ(カウンセリング・面談など)で追加されるケースを想定。

セルごとのCapability分解 — 「2. FAQ一次回答」の場合

同じJourneyでも、担うAgentによって必要なCapabilityは異なる。
共通部品化できるもの(FAQ検索エンジン等)と、Agent固有のもの(IVR連携等)を切り分けてバックログに落とす。

Site Agent(WEB × chat / voice / avatar)

  • FAQ検索
  • チャットUI・履歴保持
  • 認証前の一般的な回答

Phone Agent(電話 × voice)

  • 音声FAQ回答・読み上げ
  • IVR連携・ガイダンス

LINE Agent(LINE × chat)

  • テキストFAQ回答
  • リッチメニュー誘導

有人接続(共通Capability群)

  • エスカレーション時の会話要約
  • 回答案提案・承認送信支援
Section 06

プロダクト開発の考え方 — 開発の主語は各Agent

各Agentは「その接点での対話体験を最適化するプロダクト」として開発する。
各Agentの上で、複数のUse Caseを開発していく。

LINE Agent
LINE上での対話体験を最適化するプロダクト例:接客、問い合わせ、ナーチャリング、リマインド など
Phone Agent
電話での対話体験を最適化するプロダクト例:セールス、カスタマーサポート、接客、予約受付 など
Site Agent
Webサイト上での対話体験を最適化するプロダクト例:FAQ、問い合わせ、リード獲得、申込支援、予約 など
avatar(手段)
アバターUIでの対話体験を最適化する手段オプション例:カウンセリング、面談、高品質接客、相談支援 など
有人接続
有人対応を支援・半自動化する共通Capability群例:有人チャット支援、有人音声支援、要約、回答案生成、後処理自動化 など
Section 07

顧客提案の考え方 — 提案の主語はUse Case

顧客との会話は基本的にUse Case起点で始まる。
ただしUse CaseをAgentに直接結びつけず、Journeyに分解してから手段を決める。

顧客の入り口はいつもWhat

「Customer SupportをAI化したい」→ CS対応の変革がテーマ。Agentの指名ではない
「予約受付をAI化したい」→ 予約業務の変革がテーマ
「カウンセリングをAI化したい」→ 相談体験の変革がテーマ

そのため、以下の流れで整理する

Use Case価値・テーマを特定する
Journey(業務ステップ)に分解顧客ジャーニー・業務フローに落とす
各ステップを担う Agent を決めるチャネル×手段の組み合わせを選定
必要な Capability を定義する共通部品と固有機能を切り分ける
各Agentの Backlog に落とし込む開発項目として蓄積する
Section 08

AIファーストと有人接続

有人は上位概念ではなく、対応フローの後段に位置づける。
あくまでAIでの完結を目指し、完結が難しいケースではAIの先に有人が控える設計とする。

顧客
問い合わせ・相談・申込などの起点
接点チャネル × 手段
LINE / WEB / 電話 / メール / アプリ × chat / voice / avatar
AIエージェント対応
一次対応から完結までをAIファーストで担う
AIで完結
できない場合
有人対応(AI支援付き)
複雑案件・感情的対応・判断責任が必要な場面
データ・文脈の引き継ぎ 会話履歴・顧客情報・対応状況をそのまま有人側へ引き継ぐ。顧客に同じ説明を繰り返させない。
有人側もAIが支援 会話要約・回答案生成・承認送信などのCapabilityで、有人対応そのものも半自動化する。
Section 09

開発責任の持ち方 — 二層の責任と接続点

開発責任は各Agentごとに存在する前提。
そのうえで、複数Agentにまたがるユースケースの優先順位を横断で決める仕組みを持つ。

Plan A理想形
Agent責任者 + Use Case Owner。各Agentの開発責任と、ユースケース全体の推進責任(価値・ROI)を別の役割として立て、マトリクスで運営する。役割が揃うなら最も明確。
Plan B ★推奨現実的な運営案
Agent責任者 + ユースケース横断の会議体。Use Case Ownerを専任で置けない場合、横断会議体が価値側の意思決定を担い、決定内容を各Agent責任者が自分のバックログに持ち帰る。
会議体の例Customer Support Solution Planning
参加者Site / Phone / LINE 各Agent責任者、有人接続担当、PM / Biz / 営業
決めること対象Journey、必要Capability、どのAgentで何を開発するか
あわせて決定優先順位、リリーススコープ
Plan C注意
Agent責任者のみの場合、横断ユースケースの元請け責任が曖昧になり、優先順位が各Agent内の局所最適に分散するリスクが高い。BかAの仕組みを必ず持つ。
両者をつなぐ接続点は2つ。Capabilityカタログ(What側から見れば部品リスト、How側から見ればバックログの供給源。再利用状況を台帳化し「再利用効果順」で優先順位を議論できるようにする)と、横断会議体(Plan Bの意思決定の場)。有人接続系のCapabilityも全Agent共通部品としてカタログに置く。
Section 10

全体のまとめ — 整理の型とポイント

Use Case
価値・テーマ
Journey
業務ステップ
Agent
接点 / 体験
Capability
必要な機能
Agent Backlog
各Agentの開発項目
  • 開発は各Agent起点、提案はUse Case起点で考える
  • Use CaseをJourneyに分解し、担当Agentを割り当てる
  • 必要なCapabilityを定義し、各AgentのBacklogに落とす
  • 開発責任は各Agentが持ち、横断ユースケースは会議体などで推進する
v2で明文化する3点
順序の使い分けを宣言する顧客と話すときはWhat起点、開発資産はAgent(How)単位。Use Caseはフロー、Agentはストック。
Capabilityカタログを接続点として格上げするWhat側とHow側の翻訳装置として台帳化し、再利用効果を優先順位判断の根拠にする。
有人接続は共通Capability群として設計する上位レイヤーではなくジャーニー後段のステップ。AIファーストで完結を目指しつつ、データが引き継がれ、有人側もAIに支援される。